
疾患について
指の疾患(指の痛み)
- ばね指:指の動きが引っかかりカクッと動く
- へバーデン結節・ブシャール結節:指の関節が腫れて変形している
- 母指CM関節症:親指の付け根が変形して、力を入れると痛い
- マレット指:指先が曲がったまま伸びない
- デュプイトラン拘縮:手のひらが硬くなり指が伸びにくい
手首の疾患(手首の痛み)
指の疾患
ばね指
症状
- 指の付け根に痛みや腫れがある
- 曲げ伸ばしの途中で引っかかる、カクッと音がする
- 朝方こわばり、指がのびにくい
原因・病態
指を曲げる腱が通る「腱鞘」というトンネルで炎症がおこり、腱の動きが悪くなることで発症します。腱や腱鞘が肥厚し、指の付け根で引っかかり生じます。第2関節が引っかかりますが、原因は指の付け根にあります。親指、中指、薬指におこりやすいです。
診断
診察で指の引っかかりやカクンと動きを確認し、押すと痛みが出る部位を調べます。画像検査は必要ないことが多いですが、他の疾患を除外する目的で超音波検査を行うこともあります。
治療
多くの場合、手術をせずに治すことができます。
初期は安静とし、内服薬や湿布、ステロイド注射で炎症を抑えます。ステロイド注射は効果的ですが、頻回に行うと腱が切れることがあるので注意が必要です。指の付け根を伸ばすストレッチも有効です。
症状が続く場合は、腱鞘を切開して腱の動きを滑らかにする手術を行います。手術は局所麻酔で20分程度の日帰り手術です。
へバーデン結節・ブシャール結節
症状
- 指の第1関節(へバーデン結節)や第2関節(ブシャール結節)が腫れて痛む
- 指が痛くてにぎれない
- 第1関節に水ぶくれができる(へバーデン結節)
原因・病態
原因は不明ですが、関節の軟骨がすり減って炎症が起こり、関節周囲の骨が変形することで生じます。特に閉経後の女性に多く、遺伝的な要因も関係しています。痛みが強い時期と、落ち着く時期を繰り返すことがあります。
第1関節の変形があるものをヘバーデン結節、第2関節の変形をブシャール結節といいます。
診断
関節の腫脹、変形、疼痛があり、レントゲンで関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れていたり、骨のとげ(骨棘)があれば診断できます。
治療
原因が不明のため症状に対応して治療していきます。ますは安静にして、テーピングで動きを制限します。内服薬や湿布を使うこともあります。
変形が進み、痛みが強い場合には関節を固定する手術を行うこともあります。
母指CM関節症
症状
- 親指の付け根が痛む
- 物をつまんだり、ふたを開ける動作で痛む
- 親指の付け根の関節が腫れて変形している
原因・病態
親指の付け根にある「CM関節」は、つまみ動作に重要な関節です。よく動く関節のため、加齢や使いすぎで軟骨がすり減り、関節が不安定になることで痛みを生じます。女性に多く、更年期以降で発症しやすいです。
診断
親指の付け根に圧痛があったり、動かすと痛みがあります。レントゲンで、関節の隙間が狭くなっていたり、関節が脱臼している変形があれば診断がつきます。
治療
多くの場合は、手術をせずに治すことができます。
装具をつかって関節の安静を保ち、内服薬や湿布、注射で炎症を抑えます。温熱療法が有効なこともあります。
進行して痛みが強い場合には、関節形成術や関節固定術などの手術を検討します。
マレット指
症状
- つき指したあとに指の第1関節が伸びない
原因・病態
ボールなどが指先にあたり、腱が切れたり骨がはがれることで起こります。腱が断裂すると、指先を伸ばすことができなくなり、手袋をはめたり、ポケットに手を入れたりする時に引っかかり日常生活に支障をきたすことがあります。
診断
第1関節が曲がった状態で、自分で伸ばすことができず、他の指を使って伸ばすことができれば診断できます。レントゲンや超音波検査で、腱が切れたのか骨がはがれたのかを確認します。
治療
腱が切れたのか、骨がはがれたのかによって治療はことなります。
腱が切れた場合は、第1関節を伸ばしたまま装具などで6-8週間固定して治療します。
骨がはがれている場合は、ワイヤーで固定する手術を行います。
デュピュイトラン拘縮
症状
- 手のひらにしこりや硬い策状物がふれる
- 指が徐々に曲がって伸ばせなくなる
原因・病態
原因は不明ですが、手のひらにある膜(手掌腱膜)が肥厚して縮み、指を引っ張ることで起こります。手のひらから指にかけてしこりができ、皮膚がひきつれて指が徐々に伸ばしにくくなります。薬指や小指に多く見られます。高齢者や糖尿病患者に多いです。
診断
手のひらの腱膜が肥厚し、策状物が触れ、指が伸びにくければ容易に診断できます。画像検査は通常不要です。
治療
多くの場合は、経過観察となりますが、指が伸ばしにくくなり、日常生活に支障をきたすようになると、増殖した腱膜を切除する手術が行われます。
手首の疾患
手根管症候群
症状
- 親指、人差し指、中指がしびれる
- 親指の付け根の筋肉がやせる
- 親指と人差し指で物をつまみにくい
原因・病態
手首の掌側にある骨と靭帯に囲まれた「手根管」というトンネルの中を、指を曲げる筋肉や血管、神経が通っています。そこで神経が圧迫されることで起こります。更年期の女性や妊婦、手を酷使する職業の方に見られます。手首の骨折後で変形してくっついた場合などにも起こります。
診断
親指から中指にかけてのしびれや親指と人差し指のつまむ力が低下することで診断します。手根管をたたくことで親指から中指にしびれが生じることがあります。手首を曲げていると痺れが出る(手関節屈曲テスト)ことでも診断ができます。神経の電動速度を測ることで障害の程度を評価します。
治療
軽傷では装具を用いて安静にしたり、ビタミン剤の内服などで神経の回復を促します。神経ブロック注射をおこなうこともあります。
改善がしない場合や、症状が強い場合には手根管を形成する靭帯を切開して神経を緩める手術をすることもあります。
ドゥケルバン病
症状
- 親指の付け根から手首にかけて痛む
- 親指を動かすと痛む
原因・病態
親指を動かす2本の腱が手首を通るところにトンネル(腱鞘)があり、そこで炎症が起こることで腱の動きが悪くなり痛みが生じます。産後や更年期の女性に多く見られます。PC作業など指をよく使う仕事の人にも見られます。
診断
手関節の親指に圧痛があったり、親指を握って手首を小指側に曲げたときに痛みが出ることで診断します。
治療
安静、内服薬、湿布で治療します。症状が強い時は炎症を抑えるためステロイドに注射をすることがあります。ステロイド注射は効果的ですが、頻回に行うと腱が切れることがあるので注意が必要です。
改善しない場合には腱鞘を切開して腱の動きを滑らかにする手術を行います。
TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)
症状
- 手首の小指側に痛みがある
- 手をついたり、ひねる動作で痛む
原因・病態
手首の小指側にある「三角線維軟骨複合体(TFCC)」が転倒して手をついた時や使いすぎで損傷することで起こります。スポーツや仕事で手首をよく使う人に多いです。加齢にともなって起こることもあります。
診断
手首の小指側に圧痛があったり、動かすことで痛みがでます。また手首を小指側にまげてひねると痛みが出ることで診断できます。MRIで損傷の程度を調べることもあります。
治療
軽度の場合、装具やテーピングで安静にしたり、内服薬や湿布で治療します。炎症をとるためステロイド注射をすることもあります。断裂がある場合や症状が長引く場合には、損傷部を修復したり切除する手術を行います。
ガングリオン
症状
- 手首や指にしこりができる
- 押すと痛みや違和感がある
原因・病態
関節や腱の周囲にある袋(関節包・腱鞘)の一部が膨らみ、中にゼリー状の液体が溜まってできる良性の腫瘤です。手首の甲側や指の掌側に多く、神経を圧迫したり、物を握った時にあたることで違和感を生じることがあります。
診断
触診でしこりを確認し、超音波検査で内部が液体であることを確認して診断します。
治療
良性ですので痛みがなければ経過観察で問題ありません。自然と改善することもあります。痛みなどの症状がある場合には注射で内容を吸引することがありますが、内容物がゼリー状で粘稠性があり、吸引に太めの針を用いるため、ある程度の大きさがないとできません。また袋が残るため再発することがあります。再発を繰り返す場合には切除することもありますが、それでも再発することがあります。
