
疾患について
肘の疾患(肘関節の痛み)
- テニス肘:ものを持つと肘の外側が痛い
- 肘部管症候群:小指や薬指がしびれる
- 離断性骨軟骨炎(野球肘):投げすぎて肘が痛い
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
症状
- 肘の外側に痛みが出る
- 物を持ち上げる、タオルを絞る、ペットボトルのふたを開けると痛む
- 手首を反らす動作や握る動作で痛みが強くなる
原因・病態
テニス肘は、肘の外側には「上腕骨外側上顆」という骨の出っ張りがあり、ここに手首をそらせる筋肉や指を伸ばす筋肉の腱が付着しています。
使い過ぎや加齢により、この付着部に小さな損傷や炎症が起こるのがテニス肘です。
スポーツだけでなく、家事や仕事などの日常動作でも発症します。
診断
肘関節の外側を押すと痛みが出ることが多いです。手首をそらす動作に抵抗を加えると痛みが強くなったり(手関節背屈テスト)、中指を伸ばす動作に抵抗をくわえる検査(中指伸展テスト)をします。
必要に応じてレントゲンや超音波検査、MRIを行い骨や腱の状態を確認します。
治療
多くの場合、手術をせずに治すことができます。
痛みが強い時期には安静にし、内服薬や湿布を使って炎症を抑えます。
肘に負担をかけないようにするサポーターやバンドを用いたり、手首をサポーターで固定することも有効です。
リハビリではストレッチや前腕の筋力トレーニングを行い、腱への負担を減らします。痛みが強い場合には局所麻酔の注射を行うこともあります。
保存療法で改善しない場合は、炎症部分を切除して腱を修復する手術を行うこともあります。
肘部管症候群
症状
- 小指や薬指がしびれる
- 肘の内側に痛みや違和感がある
- 手の甲や手のひらの小指側の筋肉がやせてきた
原因・病態
肘の内側には「肘部管」と呼ばれるトンネルがあり、その中を「尺骨神経」が通っています。
この神経が骨や靭帯、筋肉などで圧迫されることで、しびれや筋力低下が起こります。
長時間肘を曲げる姿勢(スマートフォン使用や就寝中の肘曲げ)も原因となります。骨の変形やガングリオンなどの腫瘍によって圧迫されることが原因になります。また肘を曲げることで尺骨神経が肘部管から脱臼するひともいます。
診断
肘の内側を叩くと小指と薬指にしびれが走ることがあります。小指や薬指の感覚や筋力が左右で違うことを確認します。レントゲンやMRIで骨の変形やガングリオン(腫瘍)を確認することもあります。必要に応じて神経の電動速度を測り、障害の程度を評価します。
治療
多くの場合は、手術をせずに治すことができます。
肘を曲げすぎないように注意して、夜間には装具を使って肘を伸ばした状態を保ちます。内服薬で炎症や神経の回復を助けることもあります。
しびれや筋力低下が進行する場合には、神経の圧迫を取り除く手術が必要になることがあります。
離断性骨軟骨炎(野球肘)
症状
- 投球動作で痛みや引っかかり感がある
- 肘の曲げ伸ばしがしにくい
原因・病態
成長期の野球選手やラケット競技などのオーバーヘッドスポーツ(頭上の高い位置で腕や体全体を大きく使う動作を伴うスポーツ)をするひとに多く、腕を振り下ろす動作で肘に繰り返し負荷がかかることが原因です。肘の関節の骨同士がぶつかり骨と軟骨がはがれたり、靭帯が引っ張られることで軟骨が痛みます。進行すると関節内で遊離体(関節ねずみ)が生じ、肘が曲げ伸ばしできなくなることがあります。
診断
肘の圧痛や動きの制限を確認します。レントゲンで骨の変化を調べたり、超音波検査やMRIで軟骨や靱帯の状態を評価します。早期発見が治癒の鍵となります。
治療
早期では安静が基本です。投球や練習を休止し、肘の負担を減らすことで自然治癒します。骨軟骨片が剥がれている場合には、手術によって固定したり除去したりします。
